こころのお知らせけいじばん「解離」
ストレスが原因で歩けなくなる声が出なくなるなんて、あるの?
にわかには信じがたい話ですが、嘘や仮病ではなくそういう症状が出ることが実際にあるのです。
私は学生時代、アルプスの少女ハイジというアニメを例に、ベテラン講師からこの病気について教わりました。
あの話の中で、クララはなぜか歩くことができず車イスに乗っています。
はじめは家族が遠くにいて親しい友達もなく、さみしそうな少女でした。
そこにペーターやハイジがやってきて友達になり、外で毎日楽しく遊んでいると、
いつの間にかクララも活発になり最後は自然と歩けるようになっている、という筋道です。
まさにこれが解離性運動障害の経過なのです。
クララは決して「仮病で周囲の気を引いてやる」という性格ではなく、
素直で自分の気持ちを抑圧しがちな少女です。
家族と離れたさみしさも押さえて我慢していたのでしょう。
そのうち、足自体に異常はないのに歩けなくなってしまいます。
そこに友達ができて思いっきり遊ぶことができ、よりどころができたのです。
徐々にストレスも緩和され、対処能力も成長して、年齢相応の活動性を取り戻し、最後は歩けるようになったのです。
現代の解離の治療も、基本はこれと同じです。
ストレスを緩和するよう環境を調整するのがメインです。
家族や学校などに関わり方を助言するだけでも良くなることがあります。
解離性運動障害は年齢が低いほど出やすいのですが、成人でも出ることがあります。
成人の場合は女性に多いといわれています。
最後に、同じ「解離」でも「別の人格が出てしまう」という解離もあります。
これについては、また次回に・・・。
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「こころのお知らせけいじばん」は
精神科専門医いわもとあきこさんによる連載です。